AI・データの利用に関する契約ガイドラインとは?請負と準委任の違い
どーも、りけーこっとんです。
「請負契約と準委任契約、AIの開発ではどっちを使うの?」「AIの精度って、契約で保証してもらえないの?」
このような、G検定の契約の範囲で迷っている方はいないでしょうか?
この記事では、AIの開発をほかの会社に頼むときの契約と、AIのサービスを使うときの契約を解説します。
経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」の考え方、請負契約と準委任契約の違い、精度保証が難しい理由、さらに他企業や大学との連携(産学連携・オープン・イノベーション)まで整理しました。
(2026年10月更新:G検定の現行シラバス(2024年第6回から適用)に合わせて内容を見直しました。)
この記事の要点
- AI・データの利用に関する契約ガイドラインは、2018年に経済産業省が作った、AIとデータの契約の考え方をまとめたもの
- AIの開発は、アセスメント→PoC→開発→追加学習と、段階ごとに契約を結ぶ「探索的段階型」で進めるのがおすすめされている
- 請負契約は完成した成果物に責任を持つ契約、準委任契約は作業をきちんと行うことに責任を持つ契約
- AIは作ってみないと精度が分からないので、契約で精度を保証するのは難しい
手元に公式テキストが1冊あると、この記事で扱う用語をシラバスの言葉づかいのまま確かめられます。
深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト 第3版
JDLA(日本ディープラーニング協会)監修の公式テキスト。用語の意味を正確に確かめたいときの辞書がわりになります。
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この記事は、現行シラバスでは第9章「AI開発委託契約」「AIサービス提供契約」、第7章「AIプロジェクトの進め方」の範囲です(シラバスはJDLAの公式ページで確認できます)。G検定の範囲全体を一覧で見たい方はG検定チートシートもどうぞ。
この記事では、文字の装飾を次の3段階にそろえています。試験直前は赤太字だけ拾い読みしても要点がつかめます。
- 赤太字(超重要):試験で正解を決める決め手。年号・人物・数字・違いのポイント
- 青色マーカー+太字(重要):用語の定義。「〇〇とは」の一文
- 太字(覚えておきたい):あわせて覚えたい関連用語や覚え方
AI・データの利用に関する契約ガイドラインとは
AI・データの利用に関する契約ガイドラインとは、AIの開発やデータの利用に関する契約を結ぶときの考え方や注意点を、経済産業省がまとめたものです。
2018年6月に策定され、2019年12月に改訂版が出ています。
AIの開発は、普通のシステム開発と違って、次のような特徴があります。
- 作ってみないと、どれくらいの精度が出るか分からない
- 学習に使うデータによって、できあがるAIの性能が大きく変わる
- 学習済みモデルや学習に使ったデータの権利が、誰のものか分かりにくい
こうした特徴のせいで、頼む側(ユーザー)と作る側(ベンダー)の間でトラブルが起きやすかったんですね。
そこで、契約の考え方を整理したのがこのガイドラインです。
大きく「データ編」と「AI編」の2つに分かれています。
AI開発委託契約
AI開発委託契約とは、AIの開発をほかの会社(ベンダー)に頼むときに結ぶ契約のことです。
AIプロジェクトは、自社だけで進めることも、外部の力を借りて進めることもあります。
自社だけなら技術やノウハウが社内にたまり、情報が漏れる心配も小さいですが、人材や機材、データが足りなければすぐに始められません。
そこで、外部に頼む(外部委託する)ことになります。
探索的段階型(アセスメント・PoC・開発・追加学習)
ガイドラインでは、AIの開発を一度にまとめて契約するのではなく、次の段階に分けて、段階ごとに契約を結ぶ「探索的段階型」の進め方をすすめています。
| 段階 | やること | おすすめの契約 |
|---|---|---|
| 1. アセスメント | 少量のデータで、AIを作れそうか検討する | 準委任契約(NDAも結ぶ) |
| 2. PoC | 試作のモデルを作り、使えそうか確かめる | 準委任契約 |
| 3. 開発 | 本番で使う学習済みモデルを作る | 準委任契約または請負契約 |
| 4. 追加学習 | 運用しながら新しいデータで学習し直す | 準委任契約・保守契約など |
各段階の結果を見て、次の段階に進むかどうかを決められるので、うまくいかなかったときの損失を小さくできるんですね。
PoCについてはAIプロジェクトの進め方の記事で解説しています。
請負契約と準委任契約の違い
外部委託の契約にはいくつか種類がありますが、AIの開発で特に大事なのが次の2つです。
請負契約とは、仕事を完成させることを約束し、完成した成果物に対して報酬を払う契約です。
成果物が完成しなければ報酬はもらえず、成果物に欠陥(契約の内容と合わないところ)があれば、作った側が責任を負います。
準委任契約とは、成果物の完成ではなく、決められた作業をきちんと行うことを約束し、その作業に対して報酬を払う契約です。
作業を誠実に行えば、結果として期待した成果物ができなくても報酬が払われます。
違いを表にまとめると、次のようになります。
| 比べるところ | 請負契約 | 準委任契約 |
|---|---|---|
| 何を約束するか | 仕事の完成(成果物) | 作業をきちんと行うこと |
| 報酬の対象 | 完成した成果物 | 行った作業 |
| 完成しなかったとき | 報酬は払われない | 作業をしていれば払われる |
| 向いている段階 | 作るものがはっきり決まっている開発 | 結果が分からない調査・PoC |
AIは作ってみないと精度が分からないので、結果が読めない段階では準委任契約が向いているんですね。
NDA(秘密保持契約)
NDAとは、取引の中で知った相手の秘密の情報を、ほかに漏らしたり目的外に使ったりしないことを約束する契約です。
Non-Disclosure Agreementの略で、秘密保持契約とも言います。
AIの開発では、頼む側の大事なデータをベンダーに渡すことが多いですよね。そのため、アセスメントの段階など、データを渡す前にNDAを結ぶことが大切です。
秘密の情報を扱う社員にも、秘密を守る義務(秘密保持義務)を課しておきましょう。
データにアクセスできる人を限定し、アクセスできる人には誓約書を出してもらう、といった管理も有効です。
精度保証と保守契約
精度保証とは、AIが一定以上の精度(正解率など)を出すことを、契約で約束することです。
AIは、学習に使うデータや、実際に使う環境によって精度が変わりますよね。
作る前に「必ず正解率95%以上にします」と約束するのは、作る側にとってとても難しいんです。
そのため、ガイドラインでも精度を保証するのは難しいことを前提に、精度の目標を決めても保証まではしない、といった考え方が示されています。
保守契約とは、AIを使い始めたあとも、正しく動き続けるように点検や修正、学習のし直しなどを行うことを約束する契約です。
AIは運用中にデータの傾向が変わると精度が落ちていくので、導入後のメンテナンスについても決めておくことが大切です。
AIサービス提供契約
AIサービス提供契約とは、すでにできあがっているAIのサービスを、利用者が使うときに結ぶ契約のことです。
AIを一から開発するのではなく、AIの機能をサービスとして利用する場合ですね。
SaaSの特殊性
SaaSとは、ソフトウェアを自分のパソコンに入れるのではなく、インターネットを通じてサービスとして利用する形のことです。Software as a Serviceの略です。
AIのサービスは、SaaSの形で提供されることが多いです。
SaaSでは、たくさんの利用者が同じサービスを使うので、契約の内容は利用者ごとに話し合うのではなく、サービス側が決めた共通の利用規約に同意する形が一般的です。
また、サービスの中身は提供する会社が管理しているので、精度や中身を利用者が細かく決めることは難しいんですね。
データ利用権と利用規約
データ利用権とは、契約に関わるデータや、それをもとに作られた学習済みモデルなどを、誰がどの範囲で使えるかという権利のことです。
AIのサービスでは、利用者が入力したデータを、サービス側がAIの改善(追加学習)に使うことがあります。
自社の大切なデータがほかの会社のためのAIの学習に使われてしまうと困りますよね。
そのため、入力したデータをサービス側がどう使えるかを、利用規約や契約でよく確認することが大切です。
利用規約とは、サービスを提供する会社が決めた、利用者がサービスを使うときのルールのことです。
生成AIのサービスなら、生成物を商用利用してよいか、入力データを学習に使うかなどが書かれています(著作権と利用規約の記事でも解説しています)。
AIはもう大人だけのものではありません。お子さんと一緒に、生成AIの正しい使い方から学べる講座もあります。
産学連携・オープン・イノベーション・他企業や他業種との連携
AIの活用は、1社だけでは進めにくいこともあります。そこで、ほかの組織と連携する考え方も大切です。
他企業や他業種との連携
他企業や他業種との連携とは、AIやデータの活用を、自社だけでなく、ほかの会社や違う業界の会社と協力して進めることです。
例えば、小売の会社の購買データと、交通の会社の移動データを組み合わせると、1社だけでは分からなかった新しい価値が見つかるかもしれません。
国も、2016年に官民データ活用推進基本法を定めて、国や地方自治体にデータを公開すること(オープンデータ)に取り組むよう求めています。
産学連携とは
産学連携とは、大学などの研究機関と民間企業が協力して、新しい技術や事業を生み出すことです。
企業には「資金力」や「社会で実際に使う力」があり、大学には「高度な専門知識」や「研究の設備」があります。
お互いの強みを組み合わせることで、1社ではできない研究開発ができるんですね。
AI分野では、創薬AIの開発を進めるライフインテリジェンスコンソーシアム(LINC)や、大学と企業の共同研究室などの例があります。
大学の知識を学ぶ方法として、スタンフォード大学の教授らが作ったオンライン講座のCourseraや、研究論文が公開されているarXiv(アーカイブ)などもよく使われています。
オープン・イノベーションとは
オープン・イノベーションとは、自社の中だけでなく、ほかの会社や大学、研究機関などの技術や知識も積極的に取り入れて、新しい価値(イノベーション)を生み出すことです。
2003年にアメリカの経営学者ヘンリー・チェスブロウが提唱しました。
日本の企業は、研究から開発・製造まで自社だけで完結させる「自前主義」が強いと言われてきました。
でも、AI人材が足りない今、自社だけでプロジェクトを完結させるのは難しくなっています。外の力を上手に取り入れることが、競争力を高めるためにも大切なんですね。
G検定での問われ方|AIの契約の早見表
現行シラバスの「AI開発委託契約」と「AIサービス提供契約」のキーワードは、次の表ですべて確認できます。
| 用語 | 一言でいうと | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| AI・データの利用に関する契約ガイドライン | 経済産業省のガイドライン。AI開発を段階ごとに契約する「探索的段階型」を提唱 | この記事 |
| NDA | 秘密保持契約。開発のために提供するデータや情報を外部に漏らさない約束 | この記事 |
| 請負契約 | 仕事の完成に責任を負う契約。成果物が完成しないと報酬を請求できない | この記事 |
| 準委任契約 | 仕事の完成ではなく、作業を誠実に行うこと(善管注意義務)に責任を負う契約。AI開発で多い | この記事 |
| 精度保証 | AIの精度を約束すること。データ次第で性能が変わるため、AI開発では保証しにくい | この記事 |
| PoC | 本格開発の前に実現できるかを確かめる段階。ガイドラインでは準委任契約が向いているとされる | 解説記事 |
| 保守契約 | 納品後のモデルの更新や不具合対応などについての契約 | この記事 |
| SaaS | ソフトウェアをインターネット経由のサービスとして提供する形態 | この記事 |
| データ利用権 | サービスを通じて得たデータを、誰がどこまで利用できるかの取り決め | この記事 |
| 利用規約 | サービス提供者が定める利用条件。SaaS型のAIサービスでは個別契約の代わりに使われることが多い | この記事 |
| 精度保証 | AIサービスの精度を約束すること。入力データ次第で結果が変わるため、保証しないのが一般的 | この記事 |
よくある質問
Q. 請負契約と準委任契約の違いは?
請負契約は仕事の完成を約束し、完成した成果物に対して報酬が払われます。準委任契約は作業をきちんと行うことを約束し、成果物が完成しなくても作業に対して報酬が払われます。結果が読めないAIのPoCなどでは、準委任契約が向いています。
Q. AI開発で精度保証をしにくいのはなぜ?
AIの精度は、学習に使うデータや実際に使う環境によって大きく変わり、作ってみないと分からないからです。そのため、契約で精度の目標を決めても、保証までは約束しないことが多くなっています。
Q. PoC段階の契約形態は?
準委任契約が向いています。PoCは、AIが使えるかどうかを確かめる段階で、結果がどうなるか分からないため、成果物の完成を約束する請負契約にはなじみにくいからです。
よくある質問の内容までスラスラ答えられたら、次は問題形式で解いてみるのがおすすめです。選択肢を見比べると、どこで引っかけられるのかが分かってきます。
徹底攻略ディープラーニングG検定ジェネラリスト問題集 第3版
分野ごとの問題と解説がまとまった問題集。記事で覚えた用語を、本番と同じ選択式で解いて確かめられます。
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まとめ
- AI・データの利用に関する契約ガイドライン:2018年に経済産業省が作った、AIとデータの契約の考え方
- AI開発は、アセスメント→PoC→開発→追加学習と段階ごとに契約する探索的段階型がすすめられている
- 請負契約は完成した成果物、準委任契約は作業に責任を持つ。結果が読めない段階は準委任契約
- AIの精度保証は難しい。NDAで秘密を守り、保守契約で導入後のメンテナンスを決めておく
- 産学連携は企業と大学の協力、オープン・イノベーションは外の技術を取り入れること(2003年、チェスブロウ)
次回は、AIの開発で必ず必要になる「アノテーション」や開発環境、プライバシーの守り方、そしてAIが社会に与える影響(ELSI・フィルターバブル)をELSIとアノテーションの記事で解説していきます。
G検定の試験範囲をまとめて見直したい方は、シラバスの全キーワードを一行でまとめたG検定チートシートをどうぞ。分野ごとに読み進めたい方はG検定の解説記事一覧からどうぞ。
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