エキスパートシステムとは?ELIZA・MYCINと第2次AIブームを解説
どーも、りけーこっとんです。
「MYCINとDENDRAL、どっちが医療でどっちが化学だっけ?」「is-aとpart-of、矢印の向きが分からなくなる」
このような、G検定の第2次AIブームの範囲で混乱している方はいないでしょうか?
この記事では、第2次AIブームの主役だったエキスパートシステムを中心に、ELIZAとイライザ効果、DENDRAL、MYCIN、インタビューシステム、意味ネットワーク、オントロジーを解説します。
G検定は「システム名」と「何をするものか」の組み合わせをよく問うので、最後の比較表で一気に整理しましょう。
(2026年10月更新:G検定の現行シラバス(2024年第6回から適用)に合わせて内容を見直しました。)
この記事の要点
- エキスパートシステムとは、専門家の知識をルールとして入れて、専門家のように判断させるシステム
- ELIZAは1964〜1966年の対話システム。人がコンピュータに人間らしさを感じてしまうのがイライザ効果
- DENDRALは有機化合物の構造を推定(化学)、MYCINは血液疾患を診断して抗生物質を処方(医療)
- 意味ネットワークは知識を線で結んだもの。is-a(上位概念)、part-of(部分と全体)の関係が代表
手元に公式テキストが1冊あると、この記事で扱う用語をシラバスの言葉づかいのまま確かめられます。
深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト 第3版
JDLA(日本ディープラーニング協会)監修の公式テキスト。用語の意味を正確に確かめたいときの辞書がわりになります。
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この記事は、現行シラバスでは第2章「人工知能をめぐる動向」の「知識表現とエキスパートシステム」の範囲です(シラバスはJDLAの公式ページで確認できます)。G検定の範囲全体を一覧で見たい方はG検定チートシートもどうぞ。
この記事では、文字の装飾を次の3段階にそろえています。試験直前は赤太字だけ拾い読みしても要点がつかめます。
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エキスパートシステムとは
エキスパートシステムとは、その分野の専門家(エキスパート)の知識をコンピュータに入れて、専門家のように判断させるシステムのことです。
第2次AIブームの主役ですね。
中身は、「もし〇〇なら△△」という形のルールを大量に覚えさせた、大規模な条件分岐です。
知識を大量に与えると、人間に近い精度の判断ができるようになったことが、ブームのきっかけでした。
代表的なシステムは、このあと出てくるDENDRALとMYCINです。
どちらも「専門分野の大量の知識を、人間がコンピュータに教えた」点は同じなので、何の分野かで区別して覚えましょう。
第2次AIブームとは|知識の時代
第2次AIブームとは、1980年代を中心に、専門家の知識を使うAIが急速に注目された期間のことです。
第2次AIブームは「知識表現」の時代とも言われます。
日本でも、第五世代コンピュータという国家プロジェクトが進められました。
しかし、第2次ブームの人工知能で解ける問題にも限界がありました。
さらに、大量の知識を与えるのは結局人間なので「結局人間が大変なだけじゃん」となってしまったようです。
そこで、1990年代半ばには注目度合いが衰えてしまったと言われています。
代表的なシステム
イライザ(ELIZA)
ELIZA(イライザ)とは、1964〜1966年にジョセフ・ワイゼンバウムが開発した対話システムです。
人間が文章をコンピュータに打ち込むと、その返答を文章で返してくれるシステムです。
心理療法士(カウンセラー)のように振る舞い、相手の言葉の一部をオウム返しにするパターンマッチングで会話していました。
中身は単純なルールなのに、本当に話を聞いてもらえている気分になる人が続出したんですね。
第2次AIブームの時代とは被っていないのですが、その前兆になったと言われています。
イライザ効果
この対話システム(ELIZA)にちなんで名付けられたのが、イライザ効果です。
イライザ効果とは、意識的には機械だと分かっていても、無意識的にコンピュータが人間と似た心や動機を持っているように感じてしまう効果のことです。
最近のチャットAIに「ありがとう」と言いたくなるのも、ある意味イライザ効果ですね。
対話システムの性能が上がって、本物の人間のように対話できるようになれば、無理はないのかもしれません。
DENDRAL
DENDRALとは、未知の有機化合物を質量分析法で分析したデータと、有機化学の知識を使って、適合する化学構造を割り出すプログラムのことです。
1960年代にスタンフォード大学で、エドワード・ファイゲンバウムらが開発しました。
簡単に言うと、化学の分野で用いられたAIですね。最初のエキスパートシステムと言われています。
マイシン(MYCIN)
MYCIN(マイシン)とは、血液疾患(感染症)の患者を診断して、抗生物質を処方するエキスパートシステムのことです。
1970年代にスタンフォード大学で開発された医療診断システムです。
約500のルールを持ち、69%の確率で正しい処方ができたとされています。
これは感染症の専門医(約80%)よりは低いものの、専門医ではない医師よりは良い結果でした。
インタビューシステム
インタビューシステムとは、専門家にインタビューする形で、コンピュータが知識を獲得していくシステムのことです。
知識を大量に与えれば精度が高くなる、というのが第2次AIブームの人工知能でした。
しかし、その知識をどうやって教えるかが問題だったんですね。
専門家の知識には、本人も言葉にしていない、体系化されていないものがたくさんあるためです。
そうした知識を引き出すために、インタビューシステムが用いられていたようです。
比較表:名前・年代・用途
| 名前 | 年代 | 分野・用途 | 覚えるポイント |
|---|---|---|---|
| ELIZA | 1964〜1966年 | 対話(心理療法士のまね) | ワイゼンバウム・イライザ効果 |
| DENDRAL | 1960年代 | 化学(有機化合物の構造推定) | 最初のエキスパートシステム |
| MYCIN | 1970年代 | 医療(血液疾患の診断と抗生物質の処方) | 正答率69% |
| インタビューシステム | ― | 専門家から知識を引き出す | 知識獲得の手間を減らす |
意味ネットワークとは
意味ネットワークとは、概念(知識)を線で結び、その関係性を表したものです。分かりやすく図で示すと、次のような形です。
このように、知識(人間、ほ乳類など)を矢印で結んだものになりますね。結び方の代表が次の3つです。
is-aの関係
is-aの関係は、継承関係(上位概念と下位概念の関係)を示します。
矢印で示すと「ある概念」→「上位概念」です。
上の図の例で行くと、「人間」is-a「ほ乳類」、つまり人間はほ乳類の一種ですよね。
上位概念の性質は下位概念に受け継がれます(ほ乳類が「足を持つ」なら、人間も足を持つ)。
また「人間はほ乳類」「ほ乳類は動物」なら「人間は動物」が成り立つ、推移律が成り立つのも特徴です。
has-aの関係
has-aの関係は、「〜を持っている」という関係を示します。矢印で示すと「持つ側」→「持たれる要素」です。
上の図の例で行くと、「人間」や「犬」は「足」を持っています。英語の意味で「人間」has-a「足」と考えると分かりやすいかもしれません。
part-ofの関係
part-ofの関係は、部分と全体の関係(属性・包含関係)を示します。
矢印で示すと「部分」→「全体」です。
上の図の例で行くと「爪」は「足」の一部ですし、「手相」は「手」の一部ですね。
英語の意味で「爪」part-of「足」と考えると分かりやすいかもしれません。
has-aとpart-ofは、同じ関係を逆から見たものと考えるとスッキリします(人間は足を持つ=足は人間の一部)。
| 関係 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| is-a | 継承関係(〇〇は△△の一種) | 人間 is-a ほ乳類 |
| has-a | 〇〇は△△を持っている | 人間 has-a 足 |
| part-of | 〇〇は△△の一部 | 爪 part-of 足 |
part-ofの関係では推移律が成り立たない場合もあり、ここはG検定のひっかけポイントです。詳しくは推移律の記事で解説しています。
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オントロジーとは
オントロジーとは、どうやら2つの意味があるようです。
- 哲学的には「存在そのもの」を研究する学問(存在論)
- 情報科学的には、知識を共有するための概念の決まりごと
今回重要になってくるのは、当然「情報科学」の部分です。
オントロジーとは、情報科学では「概念の意味や関係性を、人とコンピュータが共有できるように決めた約束事(概念化の明示的な仕様)」のことです。
意味ネットワークで知識を結ぶときに、「is-aはこういう意味で使う」といったルールを決めておくイメージですね。
オントロジーには、作り方の違いで2つの立場があります。
| 種類 | 考え方 | 作り方 |
|---|---|---|
| ヘビーウェイトオントロジー | 概念の関係を、哲学的にきちんと正しく記述する | 人間が時間をかけて考える |
| ライトウェイトオントロジー | 完全に正しくなくても、役に立てばよい | コンピュータでデータから自動で見つける |
ヘビーウェイトオントロジーの代表例がCycプロジェクト、ライトウェイトオントロジーの例がWebのデータから関係を見つけるウェブマイニングです。
第2次AIブームが終わった理由
第2次AIブームのAIは、知識を大量に入れれば賢くなるはずでした。
ところが、専門家から知識を聞き出してルールに書き直す作業は、想像以上に大変だったんです。
知識が増えるほどルール同士が矛盾したり、例外だらけになったりもしました。
このように、コンピュータが知識を獲得することの難しさを知識獲得のボトルネックと呼びます。
これが第2次AIブームが冬の時代になるきっかけでした。詳しくはフレーム問題・知識獲得のボトルネックの記事で解説しています。
G検定での問われ方|知識表現とエキスパートシステムの早見表
現行シラバスの「知識表現とエキスパートシステム」のキーワードを一言でまとめておきます。
| 用語 | 一言でいうと | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| Cycプロジェクト | 一般常識をすべて知識ベース化しようとする試み。1984年からダグラス・レナートが進める | 解説記事 |
| DENDRAL | 1960年代スタンフォード大。有機化合物の構造を推定した最初期のエキスパートシステム | この記事 |
| is-aの関係・has-aの関係・part-ofの関係 | 意味ネットワークの関係。is-aは「〜の一種」(推移律が成り立つ)、has-aは「〜を持つ」、part-ofは「〜の一部」 | この記事 |
| QuestionAnswering | 質問に対して答えを返すタスク。IBMのワトソンが代表例 | 解説記事 |
| 意味ネットワーク | 概念をノード、概念同士の関係を矢印でつないで知識を表す方法 | この記事 |
| イライザ(ELIZA) | 1966年ワイゼンバウムが開発した対話プログラム。パターンに当てはめて返事をするだけ | この記事 |
| インタビューシステム | 専門家から知識を聞き出して整理し、知識ベースを作るためのシステム | この記事 |
| ウェブマイニング | Web上の大量の情報から有用なパターンや知識を掘り出すこと | 解説記事 |
| オントロジー | 概念とその関係を体系的に定義したもの。ヘビーウェイト(人が厳密に作る)とライトウェイト(自動で作る)がある | この記事 |
| セマンティックWeb | Webページに意味情報(メタデータ)を付け、コンピュータが内容を理解できるようにする構想 | 解説記事 |
| データマイニング | 大量のデータから有用なパターンや規則を掘り出すこと | 解説記事 |
| 東ロボくん | 東大合格を目指したAIプロジェクト。読解力の壁があり2016年に東大合格を断念 | 解説記事 |
| マイシン(MYCIN) | 1970年代スタンフォード大。血液の感染症を診断し抗生物質を提案したエキスパートシステム | この記事 |
| ワトソン | IBMの質問応答システム。2011年にクイズ番組「ジェパディ!」で人間の王者に勝利 | 解説記事 |
よくある質問
Q. MYCINとDENDRALの違いは?
分野が違います。MYCINは血液疾患の患者を診断して抗生物質を処方する医療のシステム、DENDRALは有機化合物の構造を推定する化学のシステムです。
Q. イライザ効果とは?
機械だと分かっていても、コンピュータが人間のような心や動機を持っているように感じてしまう効果です。対話システムELIZAにちなんで名付けられました。
Q. オントロジーとは簡単に言うと?
概念の意味や関係を、人とコンピュータが共有できるように決めた約束事です。
厳密に作るヘビーウェイトと、役に立てばよいとするライトウェイトの2つの立場があります。
よくある質問の内容までスラスラ答えられたら、次は問題形式で解いてみるのがおすすめです。選択肢を見比べると、どこで引っかけられるのかが分かってきます。
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分野ごとの問題と解説がまとまった問題集。記事で覚えた用語を、本番と同じ選択式で解いて確かめられます。
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まとめ
- エキスパートシステム:専門家の知識をルールとして入れたシステム。第2次AIブームの主役
- ELIZA:1964〜1966年の対話システム。そこから名付けられたのがイライザ効果
- DENDRALは化学、MYCINは医療(正答率69%)のエキスパートシステム
- 意味ネットワーク:is-a(継承)、has-a(持つ)、part-of(部分と全体)で知識を結ぶ
- オントロジー:概念を共有するための約束事。ヘビーウェイトとライトウェイトがある
次は、第2次AIブームの続きとして、Cycプロジェクトやセマンティックウェブなど「知識をどう集めるか」の挑戦をセマンティックWebとCycプロジェクトの記事で解説していきます。覚える内容が多いですが、りけーこっとんも頑張ります!
G検定の試験範囲をまとめて見直したい方は、シラバスの全キーワードを一行でまとめたG検定チートシートをどうぞ。分野ごとに読み進めたい方はG検定の解説記事一覧からどうぞ。
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